第41章 交換条件
「…あの、リーバーはんちょう」
「ん?なんだ」
「かんだのむげんのけんさしょ、わたしがつくりたいんですけど…いいですか」
「神田の?…あ、お前っなんで六幻持って…っ」
神田の短い言葉の圧に押されるまま、リーバー班長に話しかける。
するとそこでやっと神田が六幻を持ち出していることに気付いた班長が、声を上げた。
「修理は終わってんだ、支障ないだろ」
「あのな。見た目は直ってても、検査はしないと万全とは言えないんだぞ」
「だからそいつに作らせるんだろ。検査書」
そいつ、と言って神田が私に視線を変える。
交換条件だから仕方ない。
「だいじょうぶです。こんなからだでも、けんさしょはつくれますから」
小さな子供の手で、拳を握って見せる。
するとリーバー班長は僅かに苦笑した。
「仕事に精を出してくれるのは、ありがたいが…まずはその格好を、どうにかしないとな」
「え?」
格好?
リーバー班長に言われて見下ろす、自分の姿。
自分のシャツを一枚だけ着てる姿。
ずるりと肩から落ちそうなそれは、どう見てもアンバランスだった。
…確かに。
というか…なんか今更だけど…凄く恥ずかしいかもしれない。
この格好。
子供の姿だから許されるというか…。
こんな格好をリナリーがしてたら鼻血ものです。
「それに青痣も見えるし。どうしたんだ、これ」
「あ。それはたぶん、シャワーしつでたおれたときに…うったものかもしれないです」
「シャワー室で倒れた?」
そういえば、きちんと説明してなかったな。
心配そうな班長の声に、慌てて一から説明する。
もしかしたら、そこに原因のヒントか何か見つかるかもしれないし…。
…そう、思ったんだけど。
「シャワー室で卒倒って…」
「…そのまま放置って…」
「…どんまい、南」
「そのうち良いことあるさ」
同情と哀れみいっぱいの目で見てくる科学班の皆は、相変わらずだった。
そんな優しい声かけ要りません。
逆に悲しくなるから。