第41章 交換条件
「…本当に、南さん?」
「うん」
「……また科学班の薬品ですか…」
まじまじと私を見てくるリナリーに、頷いてみせる。
呆れたようなアレンの顔がグサリと胸を突いた。
普段は優しいアレンだから、その目が痛い。
こっち見ないで下さい。
「ねぇ、神田。私が抱っこしてもいいかな」
するとうずうずしたように、リナリーが神田に問い掛ける。
抱っこって…私のこと?
「周りに見せんなよ」
「うん」
私の説明をする為に大廊下から離れたものの、まだちらほらと周りに人が見える状況。
堂々と顔を出せず、未だに白衣に包まれてる状態の私をリナリーがそっと抱く。
神田より優しいその腕に、思わずほっとした。
抱き潰されるかと思ったからね…。
「ふふ。南さん、本当の子供みたい」
私を抱いて笑うリナリーは、なんだか嬉しそう。
子供好きなのかな?
にしても至近距離で見る美少女の笑顔は、威力凄いなぁ。
コムイ室長が過保護になるのもわかる。
「可愛い♪」
「んむ、」
スリスリと頬摺りされて、小さく息が漏れる。
そ、そうかな…。
まぁ子供は顔立ちの良し悪し関係なく、可愛いものだから。
…自分で言い訳してるようで、ちょっぴり哀しくなった。
「あの。リナリーにひとつ、ききたいことがあるんだけど…」
「聞きたいこと?」
リナリーを疑うつもりはないけど、思い当たるのはあの頭痛薬だけ。
それが原因なら解決策もすぐに見つかる。
…そう思ってたんだけど。
「あれ、婦長に貰った薬だから。変な薬じゃないことは確かかな」
「そっか…」
リナリーの腕の中で思わず項垂れる。
問えば、やっぱりリナリーがくれたのは普通の頭痛薬だった。
じゃあ一体いつ薬品なんて飲んだのか…
「飲み薬じゃなく、体に触れて効果のある薬だったりして」
「でも、へんなものかぶったおぼえない…」
「うーん、なんなんでしょうね」
難しい顔をするアレンは、親身に考えてくれてるみたい。
優しいなぁ。
「原因なんざ、あそこですぐにわかんだろ」
そう告げた神田が、顎でその場所を示す。
いつの間に辿り着いたのか。
それは、見慣れた科学班の研究室の扉だった。