第41章 交換条件
「起きたんならさっさと戻れ、科学班」
一緒に持ってきてくれたらしい。
昨日抱えていた荷物を押し付けられる。
「そのままでいたいなら、別だがな」
…ああ、やっぱり。
神田の体は、やっぱり昨日と同じでいつもより大きく見えてたから。
自分の手を見て、再認識。
そこには幼い子供の手があった。
「…どうも、ありがとう」
ベッドを借りたことは、お礼を言っておかないと。
頭を下げて、荷物を抱えてベッドから降りる。
吐いてすっきりしたのか、頭は冴えていた。
まだ体の痛みはあったけど、なんとかなりそうかも。
…異性の前で盛大に嘔吐なんて、正直忘れたい出来事だけど。
今回は仕方ない。
神田に絞められなかっただけ、よしとしよう。
「あ。」
部屋を出て行こうとして、壁に立て掛けてある刀に目が止まる。
やっぱり、持ってきちゃったんだ…。
「…かん」
「検査は必要ない」
名前を呼ぶ間もなく一刀両断。
なんでそんなに嫌がるのかな…。
後は検査書作るだけなのに。
「でも、ちゃんとけんさしておかないと。にんむさきではそんとかしたら、たいへんだから」
それこそAKUMAとの戦闘で支障でも出たら、命に関わる。
だからこそ、ちゃんと見ておきたいのに。
それに。
「わたしがだまってても、バレるからね」
保管室から勝手に六幻が消えてれば、誰だって気付く。
遅かれ早かれ時間の問題だと思う。
するとピクリと神田の眉が動いて、その黒い目は私をじっと見下ろした。
じっと。
じーっと。
じろじろと……なんでしょう見過ぎじゃないですか。
居心地悪くて、思わず後退りそうになる。
まるでそれが読めてたのか、神田が一歩踏み出す。
足の長いその一歩は大きく、あっという間に距離が詰まって。
「っ!?」
またもや、がしりと頭を掴まれた。
な、何…っ
力任せに口止めとか、そんなことする気じゃ…!
「なら交換条件だ」
「…はい?」
交換条件、なんて。
そんな友好的な言葉が出てくるなんて、思いもしなかったから思わず拍子抜ける。
すると私の頭を掴んだまま、整った顔がずいと近付いた。
「お前が、検査書を作れ」