第40章 幼子と暴君
「…あしたには、てもとにもどってくるよ。たぶん。だから、しんぱいしないで」
コムイ室長の言う通り修理は済んでるから、後は検査書を作れば六幻は神田に返せるはず。
「心配なんかしてねぇよ」
すると神田は、どことなく鬱陶しそうに返してきた。
あれ、六幻のこと心配してたんじゃなかったの…?
「あれは俺には、ただのAKUMA用武器だ。それ以上でも以下でもない」
「………」
吐き捨てられるように言われた言葉に、咄嗟に何も言い返せなかった。
エクソシストにとって、イノセンスは切り離せないものだから。
それはエクソシストの手足となり、武器となり。
同時に枷になってる気がする。
"黒の教団"という場所に、縛り付ける為の。
神田の過去は知らないけど…リナリーが、そうだったから。
あの子の顔から笑顔を消したのは、紛れもない彼女のイノセンスである、あの黒い靴。
そんなあの子の顔に笑顔を戻したのは、兄であるコムイ室長その人だった。
「俺の武器をどう扱おうが、俺の勝手だろ」
突き放して、でも手放せない。
そんな曖昧な場所にある思いのように聞こえた。
「……みるだけなら、」
そんな神田の姿に、気付いたら。
そんなことを口にしていた。
「たしかめるくらいなら、いいとおもう」
こんな夜中に、此処に来るくらいだから。
それだけの思いは、少なくともあるんだろう。
…きっと。