第40章 幼子と暴君
「なんで俺の名前を知ってる」
凡そ子供に向けるようなものではない、鋭い目と言葉で問いかけられる。
「ぁ、ぇ…」
これ、なんて言うんだっけ。
…蛇に睨まれた蛙、だっけ。
身長もある神田だから、子供の姿だと更に圧を感じる。
思わず声は小さくなって、体が硬直してしまう。
いや、待って。
神田であっても、これはチャンス。
私のことを伝えないと。
「わ、わたし、かがくはんのしいなみなみ、なんだけど。たぶんくすりかなにかで、こんなすがたになっちゃって…っわかる?」
腰を上げて、縋るように問いかける。
神田とはその性格上近寄り難くて、近い年頃のラビやアレンやリナリー程には関わったことがない。
でもクロス元帥程、面識がない訳でもないから。
私のことは知ってくれてるはず。
…多分。
すると神田は訝しそうに眉を潜めて、私を見下ろしたまま。
「ちまちま喋んな、はっきり話せ」
一刀両断されました。
私も確かに子供独特の拙いこの喋り方は、少し聞き取り難い。
でも、したくてしてる訳じゃないから。
不可抗力です。
「か…かがくはんだいいっぱんの、しいなみなみ。…です」
恐る恐る見上げ、再度名乗る。
すると、じぃっと私を見ていたかと思うと。
「チッ」
舌打ちされました。
何故。
「また科学班の妙な薬かよ…面倒臭ぇ」
そのまま視線を逸らしたかと思うと、神田は私のことなんて興味ないとでも言うかのように、後ろの研究室のドアに手を掛けた。
あれ…もしかして神田も、科学班に用事?
「いま、だれもいないから…って、なにしてるの」
スタスタと中に入る神田を、慌てて追う。
でもその一歩が子供の私とは差があり過ぎて、全然追い付けなかった。
研究室に入った神田が迷いなく進んだ先は、隣接した保管室。
其処には色んな薬品の他に、大事な貴重品も保管されてる。
修理した、エクソシストの対AKUMA武器なんかも。
…もしかして。