第39章 非遺伝的変異
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「───…ぅ、…」
鈍い痛みで、目が覚めた。
ポタポタと、シャワーヘッドから水滴が落ちる音。
それ以外は、何も聞こえず───…何も見えない。
「…え、あれ…?」
辺りは真っ暗で、一瞬考える。
私、どうしたんだっけ。
確か……シャワー室で、頭がグラついて…
「…そうだ」
思い出す。
やっぱり体にアルコールは残ってたのか、熱いシャワーで一気に体内が目を回したのか。
思いっきり意識を飛ばしてしまった気が…。
「っ、くしゅんっ」
倒れた際に打ったのか。
痛む体をなんとか起こせば、ぶるりと体が震えた。
そうだよね、なんせ裸だもんね…。
…というか。
「いま、なんじ…」
真っ暗なのは、もう誰もいないってことなんだろう。
…もしかして私、誰にも気付かれずに放置されてた…?
「………」
あ、なんか涙出そう。
全裸で倒れてる姿を発見されるのも、恥ずかしいけど。
それ以上に誰にも気付かれない、この幸薄感。
「……たまたまだよ、うん」
自分で自分を励ます。
そうだよ、きっと偶々。
仕方ない、仕方ない。
思わず落ち込むけど、とにかくじっとしている訳にはいかない。
倒れた際に引っ張ったのか、体にかかっていたタオルを握って体を包む。
…ん?
「…なに、」
なんか、違和感。
倒れて打った体が痛む所為か、ぎこちなくしか体を動かせなくて。
なんだろう、なんか…動かし難いというか…まだお酒回ってる?
「いたた、」
とにかく出ないと。
倒れて打ったのか、痛む膝を庇いながらシャワー室のドアを開ける。
……んん?
また、違和感。
なんだろう。
未だに頭がグラついて、正しく思考を回せないけど。
何かが可笑しい気がする。
ペタペタと素足でシャワールームを出る。
脱衣所も誰もいなくて真っ暗で、とにかく電気のスイッチを真っ先に探した。
スイッチの場所は知ってたから、なんとなくな感覚で辿り着けた。
辿り着けたんだけど。
「…え」
其処でやっと、回らない思考でもその違和感の正体に気付いた。
手が、届かない。