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科学班の恋【D.Gray-man】

第38章 宴のあとに‐R.W‐



「………」



昼。

仕事量の多い職場で、昼食を食べに食堂に行くことも間々ならず。
研究室裏の非常階段で、パンを片手に。



「…あり得ねぇ」



もう一度、俺は額を押さえて溜息をついた。
ジョニーに聞いた話は、俺が夢の中で見た南の立場と似通っていた。

…まさか。
偶々、似てただけだろ。
というか南を抱き枕にしてたから、あんな夢を見たんだろう。



「にしても…」



あいつをまた抱き枕にするなんて。
………やっぱり俺、欲求不満なのかな…。



「…はぁ、」



いつまでもそこで悩んでる暇もなく、残りのパンの欠片を頬張って腰を上げる。
南もからかわれると困るから、ジョニーに口止めしてたんだろ。
となれば俺からわざわざ言うことでもないし。

こういうことはお互いに触れないに限る。

そう心の内で言い聞かせて、研究室に続くドアを開けた。



「?」



タイミングが良いと言うべきか、悪いと言うべきか。
そういう時に、ついその姿を捜してしまうのか。
同じく研究室内で昼食を取っていたのか、通り過ぎ様に給湯室に南の姿を見つけた。

…正しくは、シンクに両手を付いて項垂れている姿。



「…どうした?」



偶々見つけてしまった、給湯室の中。
見過ごす訳にもいかず声をかける。



「あ、班長。いえ、ちょっと…っ」



俺の姿を見た途端、慌てて背筋を正す。
その顔色は他の二日酔い連中に比べたらマシだったけど、眉間にはくっきりと皺が寄っていた。



「頭痛が、中々治らなくて…」



そういえば、そんなことリナリーと話してたな。



「昨日の酒の所為か」

「多分…今日寝たら、きっと治ると、思います」



苦笑いしながら応える南は多少ぎこちなかったけど、それでもいつも通り。



「無理はするなよ」

「はい。気を付けます」



やっぱり無駄に触れることじゃない。
このまま知らぬフリをすれば、またいつものように話せるようになるだろ。



「ところで…麺、ふやけてんぞ」

「え?…あっ!」



置いてあるカップ麺を指差せば、慌てた南が手を伸ばす。
そんな姿に、つい口元は緩んでいた。

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