第36章 宴のあとに‐L‐
「でも此処は仮眠室じゃないし…南さんに何かあってからじゃ、遅いです」
どことなく不安そうにアレンが呟く。
どうやらオレと同じ心配をしてるらしい。
そんなアレンに、やっとその言葉の意図を理解したのか。
南はきょとんと目を瞬く。
「……ジョニー、私のこと女として見たことある?」
「うーん…女性っていうより同期仲間かな」
「うん、よし」
いやいや、うんよし。じゃねぇよ。
何スッキリした顔で親指おっ立ててるんさ。
何も解決してねぇからな、それ。
「ありがとうアレン。でも私もお酒が結構、入ってて…今から部屋に戻って寝たら、朝此処に皆を起こしに来れない気がして」
苦笑混じりに言う南の顔は、確かにまだ赤みが残ったまま。
「それなら此処で寝た方が、仕事も遅刻しなさそうだし」
「それわかる。オレも今ベッドで寝たら、爆睡しちゃいそうだからさー」
「固い床で寝た方が、熟睡しなくて済むよね」
「うんうん」
そんな仕事中毒者あるある要らないから。
にこにこ話してっけど、それ大分ヤバいからな。
仕事に毒され過ぎてるからな。
「大丈夫だって、オレがいるし。周りもこんな状況だし。変なことは起きないよ」
任せて、とばかりに薄い胸を叩くジョニー。
確かにこの状況で、何か起きる可能性は低いとは思うけど。
「………」
「……何?」
じっと南を見る。
未だアルコールが回っているその顔は、頬を朱色に染めている。
そんな顔の目元は、どことなくとろりとしているように見える。
………こんな顔してんのに放っておけるかっての。
「んーん。わかった、」
南が自分より仕事を優先させることなんて、わかってた。
仕方ないと言えば、仕方ないかもしれない。
「なら、オレも此処に残るさ」
それでも、黙ってなんて見過ごせねぇから。