第35章 熱を帯びる
「頭痛い…」
やっぱり少し、飲み過ぎたらしい。
痛む頭を抑えながら、床に転がった酒瓶を片付けていく。
「んぅー、リナリぃ…」
「はいはい、リナリーはお兄ちゃん大好きですよー」
足首に絡みつくのは、結局また潰れて床に転がったコムイ室長。
メソメソと泣き寝言を言うその頭を、よしよしと撫でる。
大丈夫ですよ。
リナリーだって室長のこと、ちゃんと思ってるから。
だから私の足を掴むのはやめて下さい。
「ぅぅ…水ぅ~…」
「はいはい、タップ顔上げて」
「ぅ…南…?」
「うん。はい水、少し飲んで」
椅子の横に寝そべる、大きな塊を見れば呻くタップ。
少し口に水を含ませてあげると再び泥酔してしまった。
何処を見渡しても、本当に屍状態。
こんな皆を放ってなんかおけない。
…でも。
「頭、痛い…」
ズキズキ
ズキズキ
頭の痛みは酷くなる。
ジョニー、ついでに頭痛薬も貰ってきてくれないかなぁ。
「ん…」
身動ぐ小さな声。
今度は誰が目を覚ましたのかと、目を向けて。
「あ」
その人の姿に思わず声が漏れた。
「ふぅ…あれ、俺…」
未だに赤い顔のまま、とろんと微睡んだ目が開く。
くしゃりと明るい髪を掻いて、状況を把握するように辺りを見渡すその人。
「リーバー班長」
「…?」
「具合、どうですか。悪くないですか?」
そんな椅子に凭れたままの班長の顔を伺う。
酔ってるみたいだったけど、タップみたいに顔面真っ青じゃない。
大丈夫そうかな…。
「…南?」
「はい、私です。お水要りますか?」
水の入ったコップを差し出せば、覚束無い手だけど受け取ってくれた。
流石班長、皆より泥酔はしてないみたい。
「ぅう…」
不意に隣で呻く声がして、見れば頭を抱えるジジさん。
忙しないなぁ。
「ジジさんも、お水要ります?」
「うぅ、バク支部長のバカヤロ…」
「…バク支部長?」
顔色を伺えば、寝言で返される。
どうやら夢で魘されてるだけらしい。
まぁ、具合が悪くなければいいんだけど。
ほっとしてジジさんから顔を離そうとすると、ぎゅっと手首を誰かに掴まれた。