第35章 熱を帯びる
「クロス元帥も、遅くまで付き合ってくれてありがとうございました。後は私達でなんとかしますから」
一番お酒を煽っていたのに、一番平気な顔をしている元帥に頭を下げる。
途端に、頭がくらくらした。
…まずい。
私も相当酔いは回ってるらしい。
「野郎共だけなら放っておいても大丈夫だろう。無理せず休め、素面じゃねぇだろ」
そっと、元帥の手が頬の赤みをなぞるように触れる。
我が道を行くタイプだとばかり思っていたのに、こうして気遣ってくれる優しい一面もあるなんて。
今日一日で、私のクロス元帥に対するイメージは変わったと思う。
エクソシストは皆、雲の上の存在とばかり思っていたけど…こうして触れ合うと、普通に接してくれる人達なんだ。
普通に、生きている人達。
「ありがとうございます。でも私の職場仲間ですから。責任持って、最後まで見ます」
どうせ明日、誰も仕事の開始時間には起きられなさそうだし。
私が目覚まし時計になってあげないと。
「そうか。…コムイも良い部下を持ったな」
ふ、と笑みを零して。
咥えていた煙草を灰皿に揉み消して、元帥は背を向ける。
「無理はするなよ」
その背中にもう一度だけ、ゆっくりと頭を下げて見送った。