第35章 熱を帯びる
振り返れば、きっと楽しい飲み会だったと思える。
コムリンXに破壊されることなく、お酒を堪能できた。
皆のどんちゃん騒ぎにも、無駄に巻き込まれずに済んだ。
面識のなかった、あのクロス元帥とも少し近付けた気がしたし。
…だけど。
「うーん、もう飲めない…」
「ぉぇ…飲み過ぎた…ぎもち悪ィ…」
「ぐー…」
「…結局、こうなるんだよね…」
目の前には、泥酔したり酔い潰れた研究員だらけ。
大体は最後はこんな感じになる。
そこに歯止めをかけてるのは、いつもリーバー班長だった。
潰れた皆を介抱しながら、部屋に戻って寝ろと叩き起こしていたっけ。
…でもその声は今日は聞こえない。
何故なら。
「班長、大丈夫っスか?」
「んー、…」
「あちゃあ…駄目だ。酔ってる」
伺うように、班長を覗き込んでいたジョニーが頭を垂れる。
椅子に凭れて微睡む班長の顔は赤い。
そう。
あのリーバー班長さえも、酔ってしまっていたから。
コムイ室長が来る前から、ジジさん達にお酒煽られてた班長だから。
その後の室長との晩酌が、決定打になっちゃったんだろう。
「室長、起きて下さい。リナリーが結婚しちゃいますよ」
「嫌だぁあ僕のリナリィイ!!」
「はいはい、私はリナリーじゃないですから。抱き付かないで下さいね」
声を掛ければ、ガバッと起き様に抱き付いてくる室長。
その顔を押し返しながら、どうしたものかと悩む。
班長、こんな面倒なこといつも一人でやってたんだ。
大変だっただろうなぁ…。
「屍状態の奴らは毛布でも掛けておきゃいい。全員を部屋に送り届けるのは、到底無理だぞ」
確かに、クロス元帥の言う通り。
この場で泥酔していないのは私とジョニーだけ。
女の私と、ひ弱なジョニーじゃ皆を運ぶことも難しい。
「そうだね。オレ、医務室から毛布借りてくるから。南は皆を見ててくれる?」
「うん、わかった」
ふらふらと少し危なっかしい足取りで去っていくジョニーを、見送る。
大丈夫かな…。
なんだかんだジョニーも酔ってるみたいだし。