第34章 みんなの宴
「支部が違うと仲間じゃないってのかよ。差別だ差別!」
「あッコラ!」
「わぷっ?」
そんな感情に浸っていたら、唐突に強い力で抱きしめられた。
この酒臭さは…やっぱりまたジジさん!
その過度なスキンシップ、お酒入ると拍車掛かりますよね…!
「俺だって南の上司だよなぁ。一緒に釜の飯食った仲だもんなっ」
「ま、まぁ…はい」
ジジさんの言葉は一理あるから、大人しく頷いておく。
私にとって、支部は違っても目を掛けてくれるジジさんは良き上司だと思う。
「ほら見ろ!リーバー、南はちゃんとわかってくれてるぞ」
「はぁ…わかったわかった。わかったから、いい加減に絡むのはやめろ」
「絡みじゃない、愛だ愛。なー、南」
「ぃっ…いたたたッジジさん、痛いっ」
だから、お髭を擦り付けるのはやめて下さい!
「おいジジ、やめろって!」
「あれー、何してんスか?」
「あ、今日の主役がジジに食われてる」
「あははっ!いいな、オレも混ぜて~」
リーバー班長の静止も虚しく、わらわらと集りに来る科学班の皆。
まずい。
これ、前回の飲み会と一緒だ。
散々絡まれて、泥酔からの二日酔いコース。
その事態を想像して思わず顔が青くなる。
───その時だった。
「いいね、楽しそうで」
静かにその声が響いたのは。
「へ?」
「え」
「うわ、」
「…あ」
馴染みあるその声に、思わず皆の動きが止まる。
「可笑しいな…僕、仮にも科学班の一員なんだけど。なんで僕ナシで飲み会やってるんだろう」
不思議そうに首を傾げながら、眼鏡の反射で表情が見えないその人は白々と呟く。
黒い巻き毛。
教団で一番偉い人が着る、ローズクロスの白い服。
「いや、これは…急に決まった飲み会でして」
「室長、仕事溜まってたでしょ。邪魔しちゃ悪いかなって…」
そう、コムイ室長その人だった。
…呼ばなかった理由は大体わかるけど。
酔った勢いでコムリン発動させたり変な薬盛ったりするもんね、この人は。
ダラダラと冷や汗を流しながら口々に弁解する科学班の皆。
それを見渡す室長はピクリとも表情を変えない。
…怖いです。