第34章 みんなの宴
「リーバー!飲んでるかぁあ!!」
「うぐっ。おい、ジジ…っ首を絞めるなっ首!」
でも反対側に座ってるリーバー班長は、凄く絡まれてる。
それはもう、凄く。
「お。見当たらないと思ったら、そんな所に隠れてたのか」
すると、ヒョイとこちらを覗いたジジさんと目が合った。
左右に座ってるリーバー班長とクロス元帥が、共に背丈のある人だからか。
私、隠れちゃってたのかな。
「南、俺とも飲もうぜ~!折角だしよ!」
「わ、ちょ…っジジさんっお酒零れるッ」
肩に腕を回されて、わしわしと頭を撫でられる。
ついでに頬擦りしてくるもんだから、無造作に生えている無精髭がじょりじょりと当たって痛い。
完璧に酔ってますね、ジジさん!
「だからやめろって!何度言えばわかんだよ、お前はッ」
怒った声で、リーバー班長がジジさんの体を引き剥がす。
た、助かった…。
「…まるで番犬だな」
「え?」
ぼそりと呟いた低い声は、元帥から。
ワインを口にしながら、その目はジジさんを怒るリーバー班長へと向いていた。
「なんだ、気付かなかったのか」
意味がわからず見上げれば、元帥は涼しい顔で笑う。
「お前さんが下手に巻き込まれないよう、壁を作ってるだろ。番犬の如く」
「…え?」
壁って…誰が?
リーバー班長が?
いつも呆れた顔して遠目からどんちゃん騒ぎを見守ってるけど、なんだかんだ最後まで付き合ってる、そんな班長が?
「なんだよリーバー、お前だけズリィぞ!俺にも可愛い部下を愛でさせろよっ」
「お前の部下じゃねぇだろ、支部違いだッ」
元帥の言葉に、まじまじと班長を見やる。
暴れるジジさんを抑えて、咎める姿は…確かに。
……私が平和に飲めてたのって、班長のお陰だったんだ…。
「………」
どうしよう。
凄く、嬉しい。
最近、さり気ない班長の優しさを感じることは時々あった。
でもそんな優しさ、今まで知らなかったから。
言われないと気付かない程の、ささやかな好意。
それをじんわりと感じて、つい頬が緩む。