第34章 みんなの宴
「珍しいですね、元帥がこんな所に顔出すなんて」
「馬鹿弟子が最近口に出す女がいてな。顔を見に来ただけだ」
「アレンが?」
きょとんとするリーバー班長に、クロス元帥の目がこっちを向いて……ん?
「聞けば、先日の任務に同行したそうじゃあないか」
んん?
「AKUMAに薬品を食らわせるとはな。大人しそうな顔して、やるもんだ」
それって…まさか私のこと?
どう聞いたって、当てはまる項目だらけで。
どう見たって、元帥の目は私に向いていて。
最近口に出すって…アレン、私のこと気に掛けてくれてたのかな。
てっきりリナリーに言われたから、心配してくれてるとばかり思ってたけど…そうじゃなかったのかも。
良い子だな、本当に。
「馬鹿弟子が世話になったな」
「いいえ、私の方こそ」
頭を金槌で殴られたり、食人花の世話を押し付けられたり。
アレンから聞くクロス元帥のことは、良い話なんて一つもなかったけど。
やっぱり師は師、弟子は弟子なんだ。
頭を下げれば、クロス元帥がふと笑みを零した。
あ…この笑顔なら、そんなに威圧感ないかも…。
「しかし、女としてはいまいち物足りんな」
「な…っ」
前言撤回。
顔をずいっと近付けてのたまう元帥に、思わず声を上げる。
確かに私は美人の部類じゃないけど…ってこれなんかデジャヴ!
「び…美人の酌がいいなら、リナリーでお願いします」
「美人?」
おずおずと言い難そうに返せば、クロス元帥の切れ目がぱちりと瞬く。
「何を言う。女は美人が全てじゃあないぞ」
「…はい?」
何を言ってるんだろう、この人は。
いっつも、誰かしら美女を隣に侍らせてる(という噂の)この人が。
「俺の好みは芯のある女だ。美人であれば、尚良い。それだけだ」
「……え」
意外だった。
絶対に美女好きかと思ってたのに。
「"美"というものは外見だけじゃない。芯を持ってる女性は、それだけで美しく映るもんだ」
わぁ、凄いキザな台詞。
なのにまるで嫌な感じがしないのは、サラリと当たり前に口にしているからか。
…アレンのあの紳士さって、この師匠譲りなのかな。
もしかして。