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科学班の恋【D.Gray-man】

第32章 〝ただいま〟と〝おかえり〟



「……医務室」

「はい?」

「医務室は。行ったのか」



僅かにずらした手の隙間から、班長のきつい視線が見える。

まずい。
あれはサボり魔の室長に怒ってる時の班長じゃなくて、ジョニーが貧血で倒れた時に怒ったのと同じ顔だ。
医務室に放り込みながら、体力ない奴は辞めろって厳しい言葉も投げ掛けてた。
…怖かったな、あの時のリーバー班長。



「あ、いえ…まだ」

「なら早く行け。ちゃんと婦長に診てもらえ。軽視していい怪我じゃないだろ」

「そ、れは…」



軽視してるつもりはないけど…。
実際もう出血もないし、痛みもぶつけたりしない限り平気。
消毒し直して、新しいガーゼに変えればいいだけ。
それくらいなら自分でできる。
だから医務室に行く予定は最初から私の頭にはなかった。

…だってあの婦長さん怖いんです。
顔と性格が。



「行きます、医務室。ちゃんと。…すみません」



でも今の班長に逆らう方が怖いので、ここは素直に言うことを聞くのが一番。
頭を下げて頷けば、班長は何か言いたそうな顔をして、でもぐっと口を噤んだ。
…なんだろう?



「…ちょっと待ってろ」

「え?」

「おい、ロブ。急用できたから、医務室に行ってくる。何かあればゴーレムに通信入れろ」

「医務室?怪我でもしたんですか」

「野暮用だ」



研究室のドアの向こうに顔だけ覗かせて、早口にそう告げると再び班長がこちらを向いた。



「行くぞ」

「…え」



その手がしっかりと私の腕を掴む。
え、これって、その…強制連行ですかっ?



「ちゃんと医務室に行きますから。班長は仕事に戻って下さい…っ」

「お前を見届けたらな」

「っ…仕事、溜まってるんでしょう?班長がいないと大変なんじゃ…」

「生憎少し間を空けたくらいで仕事が回らなくなる程、腕がないとは思ってない」



慌てて捲し立てても、先を歩く班長に一切迷いはなく。
引かれるままに医務室に続くエレベーターに乗せられる。

ええ、そうでしょうとも。
リーバー班長以上に仕事できる人は科学班にいません。
それはよく存じております。

ですが。

怒った班長と二人きりで、エレベーターの中とか。

気まずいから…!

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