• テキストサイズ

科学班の恋【D.Gray-man】

第32章 〝ただいま〟と〝おかえり〟



「おかえり、」



くしゃりと、一度だけ優しく頭を撫でられる。

それは今日何度も聞いた言葉だった。
コムイ室長や他の団員達。
科学班の皆もそう。

なのに。



「た…ただいま、帰りました…」



すとんと、私の胸に落ちてきたその声は。
ああ、帰ってきたんだと。
不思議と強く、私に実感させてくれた。

…"ただいま"って言うの、こんなに気恥ずかしいものだったかな…。



「悪いな、本当は迎えに行きたかったんだが…」

「室長が最終データの確認を全部放って、逃げちゃってさー」

「そのツケで仕事に追われてたんだよ」



苦笑する班長の言葉に、ジョニーとタップが肩を落として付け加える。
成程、だから司令室に班長の姿もなかったんだ。

でも、来ても来れなかったって…それ室長の所為だったんですね。
相変わらず仕事のサボり魔らしい。



「それで人手不足で俺が呼ばれたってワケ」



ばちんっと大袈裟な程のウィンクをしてくるジジさんに、納得する。



「しっかしまぁ、あの南が任務に同行するまでになるとはな!成長したもんだ!」

「いたっ」



バシバシと笑顔で背中を叩いてくるジジさんの性格は、相変わらず強烈なものだった。
け、怪我に響く…ッ



「おい、やめろってジジ。怪我人だぞ」



呆れた顔で、班長が私とジジさんの間に腕を割り込ませる。



「んん~?」

「…なんだよ」

「いや。…じゃあ乱暴しねぇから、こっち来い来い」

「え、えーっと…」

「行かなくていいからな、無視しろ無視」



訝しげに班長を見ていたかと思うと、今度は私を手招きしてくる。
ジジさんって面白いけど、時々何考えてるかわからない。

/ 1387ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp