第32章 〝ただいま〟と〝おかえり〟
「おかえり、」
くしゃりと、一度だけ優しく頭を撫でられる。
それは今日何度も聞いた言葉だった。
コムイ室長や他の団員達。
科学班の皆もそう。
なのに。
「た…ただいま、帰りました…」
すとんと、私の胸に落ちてきたその声は。
ああ、帰ってきたんだと。
不思議と強く、私に実感させてくれた。
…"ただいま"って言うの、こんなに気恥ずかしいものだったかな…。
「悪いな、本当は迎えに行きたかったんだが…」
「室長が最終データの確認を全部放って、逃げちゃってさー」
「そのツケで仕事に追われてたんだよ」
苦笑する班長の言葉に、ジョニーとタップが肩を落として付け加える。
成程、だから司令室に班長の姿もなかったんだ。
でも、来ても来れなかったって…それ室長の所為だったんですね。
相変わらず仕事のサボり魔らしい。
「それで人手不足で俺が呼ばれたってワケ」
ばちんっと大袈裟な程のウィンクをしてくるジジさんに、納得する。
「しっかしまぁ、あの南が任務に同行するまでになるとはな!成長したもんだ!」
「いたっ」
バシバシと笑顔で背中を叩いてくるジジさんの性格は、相変わらず強烈なものだった。
け、怪我に響く…ッ
「おい、やめろってジジ。怪我人だぞ」
呆れた顔で、班長が私とジジさんの間に腕を割り込ませる。
「んん~?」
「…なんだよ」
「いや。…じゃあ乱暴しねぇから、こっち来い来い」
「え、えーっと…」
「行かなくていいからな、無視しろ無視」
訝しげに班長を見ていたかと思うと、今度は私を手招きしてくる。
ジジさんって面白いけど、時々何考えてるかわからない。