第32章 〝ただいま〟と〝おかえり〟
「AKUMAが出たんだって?大丈夫だったか」
「はい、一応…わっ」
「南がいない間ゴーレムの在庫確認、大変だったんだからなー」
「タップ?そうなん───…うぷっ」
「よーしよしよし!よく帰ったなーっ我が同胞っ」
「いやジジはアジア支部だろ」
「バーカ。支部は違っても同じ科学班なら同胞だろ」
「よっし。それなら俺もー」
「待て待てマービン!南が埋もれてるから。お前らに埋もれてるからっ」
わらわらと集まってきた科学班の皆に揉みくちゃにされる。
タップの強烈なハグを喰らったかと思えば、今度は半ばホールド気味にジジさんに抱き込まれる。
頭を荒く撫でてくるこの人は、アジア支部配属なはず。
なんで此処に…というかマービンさん今ハグしたら息が…っ
「───ったく。嬉しいのはわかったから、落ち着けお前ら!」
不意にぐいっと強い力で腕を引かれる。
ジジさんを引き剥がしたその手は、囲う皆から遠ざけるようにその背中に私の体を隠した。
「ちょっと、邪魔しないで下さいよー」
「感動の再会中じゃないっスか」
「気持ちが一方的過ぎんだよ、お前らは。大勢で寄って集ったら南が潰れるだろ」
ぶーぶーと文句を上げる科学班の皆を前に、盛大に溜息をつくその人は。
180cm以上ある高く大きな背中。
金髪に近い、明るいツンツン跳ねた茶色の髪。
「…リーバー班長」
私の上司、その人だ。
「ん?」
思わず名前を口にすれば、背中を向けていた班長が振り返る。
「大丈夫か?任務で怪我したんだろ。体、痛んだりしてないか」
「ぁ…はいっ。大丈夫です」
肩に優しく乗る大きな手。
気遣う声にコクコクと頷いて見せれば、伺うように見下ろしていた目が、そうか、と頷いて。
「…よく頑張ったな、お疲れさん」
不意に優しく微笑んだ。