第30章 失いたくないもの
「っあ、えっ?なんで、服、」
思ったより大丈夫らしく、南が自分の体を見下ろす。
破けたシャツをおどおどと託し合わせる姿に思い出す。
さっきは色々と必死で、なんとも思わなかったけど…うん。
…………下着、見ちまった。
出血で染まってたけど、あれは───
「ガァアアッ」
「イテッ。わ、わかったさ!オレが悪かったです!」
思わず脳裏に浮かべれば、ティムがガブッとオレの手に噛み付いた。
さっき南を守るように鳴いていた姿を思い出す。
ティムは多分、南の安否がわかってたのか。
でもオレも疾しい気持ちで触ってた訳じゃねぇんだけどっ
「何ティムとじゃれてるんですか」
冷ややかな視線をオレに向けたアレンが、溜息をついて南に視線を切り替える。
「無事でも手当てはしないと。南さん、怪我見せて下さい」
「い、いや…うん。自分で、するよ。それより二人の方が、私より酷い怪我だし。手当てしないと」
「何言ってるんですか。僕達は団服がありましたが、南さんは生身だったんですよ」
確かに、アレンの言う通り。
生身で受けた怪我が、そんなに浅い方が不思議だった。
なんで───
「…ネクタイ?」
破り裂いた南のシャツは、胸元にポケットが付いていた。
そこから覗くネクタイは、確か南が科学班から貰った御守りだと言っていた。
シャツを裂いた際に落ちたのか。
草原に落ちている、それに目が止まる。
キラリと光るものを見つけて裏返せば、割れたメダルみたいなもんが薄い布の中から出てきた。
まさかこれに当たって威力が落ちたとか?
……本当に御守りさな。
「あっ」
上がる南の声に目を向ける。
オレの持つネクタイを凝視する顔に、とりあえずと手渡した。
「これが守ってくれたみたいさ」
「え?」
「中のメダルが割れてた」
「え!?」
予想を口にすれば、サァっと南の顔が何故か青くなった。