第28章 AKUMAと悪魔
「面倒事って…村長さんが亡くなったのに…」
「自分達に害が及ぶのなら見限ることも必要。同じ村の者に手をかけていたからこそ、できることだと思います」
非道だとか冷徹だとか、非難の言葉は色々あるけれど。
AKUMAと人間。
どちらが果たして本当の悪魔なのか。
そう問いかけたAKUMAの言葉を思い出す。
本当に無慈悲な生き物はどちらなのだろう。
「あー!ワタシの村長ちゃんガ!」
「死体を使って遊ぶなっての…!」
突然響くAKUMAの声に慌てて振り返る。
見えたのは村長さんの遺体を地面に押し付けているラビだった。
「死人に構う余地はねぇさ。アレン、本体を叩け!」
「わかってます」
いつの間にかAKUMAの背後を取ったアレンが腕を振るう。
しゅぱんっと伸びた白い帯が忽ちAKUMAの体の自由を奪った。
「まァ縛るのが好ミ?ワタシと一緒ね♡」
「…このAKUMAさっきから発言がいちいち引っ掛かるんですが」
「言うな、アレン。そこツッコんだら終わりさ」
アレンの"道化ノ帯(クラウンベルト)"に拘束されても嬉しそうにクネクネと体を揺らすAKUMA。
確かに、なんていうか…気持ち悪い。
「で・も♡ワタシ、縛られるヨリ縛る方が好みナノ」
にんまりと笑うAKUMA。
すると、きらりとその体に一瞬何かが光って見えて。
「───!」
ぶわっ!と勢いよくAKUMAの体中から何かが飛び出した。
あれは…糸?
「アレン!」
「平気です…!」
うねり襲う無数の糸をアレンの左腕が断ち切る。
同じくラビも、素早く飛び退くと無事に糸を回避していた。
よかった、捕まってない。
「死体を操ってたのは、その糸だったんさな」
「手の内はギリギリまでバラさないモノよ」
鋭い爪で"道化ノ帯"を切り裂き、自由の身となったAKUMAがパチンと二人にウィンクする。
「じゃあもうタネは終わりさ?」
「そうね。もう明かすモノはないけれど…舞台は整ったワ」
「舞台?」
怪訝に辺りを見渡すアレン。
にんまりと笑ったAKUMAは、笑顔のままにピンッと指先を弾いた。
瞬間、
「っ!?」
ぐんっと
目の前の景色が揺れた。