第28章 AKUMAと悪魔
「っ!」
「隙アリ♪」
遺体であっても、咄嗟に攻撃を止めるアレン。
それが狙いだったのか、AKUMAの爪が村長さんの遺体を貫いて飛び出した。
ドスドスと、鈍い音を立ててアレンの体に爪が突き刺さる。
「くっ…!」
「アレン!」
「大、丈夫です…っ」
地面に腕を突き立てて、アレンが低い声でラビに応える。
その姿に不安で胸が騒ぐ。
確かにエクソシストは常人より頑丈な体をしてるけど、万能な訳じゃない。
急所に当たれば、死ぬのは人としての道理。
「っ…」
ぎゅっと手を握って二人の無事を願う。
…やっぱり私はこうして何かに縋ることしかできないんだ。
そう悟ると同時に、歯痒さのようなものを感じた。
「椎名殿、もう少し離れましょう。此処も危険です」
「は、はいっ」
トマさんに促され、慌てて後について距離を取る。
そうしながらなんとなく、視界に映ったのは少し離れた場所にある村の民家。
ふと疑問が沸いた。
結構な打撃音が飛んでいるのに、辺りは静寂。
村長さんが死んでしまったのに…村人の姿は不自然な程に一人もいない。
確かに少し村から離れてはいるけど、この激しい戦闘の音が聞こえない距離じゃないはず。
「…あの、トマさん」
「どうしました?」
「村の人達は何処かに避難したんですか?」
思い出すのは、今朝遊んだ子供達。
あの子達は、きっとクロル君の境遇を知らない子。
まだこの村の歪な掟に、思考が染まってない子達だ。
あの子達にこのAKUMAの恐怖は味わわせちゃいけない。
避難していることを願ってトマさんに問えば、少しの沈黙を作って。
「…いいえ」
トマさんは首を横に振った。
「ウォーカー殿と村を調査している時は、変わった方々としか思いませんでしたが…村の長の思考を知った今では、確信できます。この村の者は、他人を"人"として見ていない」
「え…」
「私達も、その前に来たファインダーも。彼らにとって"生贄"であるか否か。それだけだったのでしょう」
だから、と言葉を続けてトマさんの目は民家へと移る。
「面倒事には関与しようとしない」