第28章 AKUMAと悪魔
「っやめろ!」
アレンが飛び出す。
そのままAKUMAへと掲げられたのは、奇妙に赤黒く染まった腕。
アレンのその左腕は、珍しい寄生型の対AKUMA武器イノセンス。
「あラ、食事の邪魔ハするものではナクてよ」
空を切るアレンの腕に、攻撃を避けたAKUMAが後方へ跳ぶ。
「何が食事だ。死人を使って遊ぶな」
「あラあラ、酷い言い草ねぇ。ワタシ、可笑しなコトしてないワヨ」
キョトンと首を傾げて、睨み付けるアレンにAKUMAは笑う。
「ここの人間と同じコト、してるだけダモノ」
同じこと…?
引っ掛かるAKUMAの言葉に、不意に頭の中で思考が巡る。
村の繁栄のために人を捧げた儀式。
その人々は村の糧になったと言った村長さん。
儀式の為に歌われた駒鳥の歌。
お祈りの歌だと、そう言った子供達。
屋敷の地下で見た、肉の削り取られた骸。
"お祈りが届けば、ご馳走が食べられるんだよ"
"これは獣に食われた跡じゃない"
"みんな、おいしいって言ったんだ"
村の子供。
ラビ。
クロル君。
皆の言葉のパーツが重なり合う。
"負けたら、たべられるから"
まさか。
"結局誰が駒鳥食べちゃったのかな"
"…人間"
"え?"
「オニイサンに謂ったでショウ?飢えては食を択ばず」
まさか。
"人間が、食べた"
まさか。
「本当に悪魔なのは、ワタシと人間。ドチラなのかしらね?」
目を細めて笑うAKUMAの言葉は、最悪な結論を私の頭に浮かび上がらせた。