第28章 AKUMAと悪魔
「なんで、お前…っ」
「あラ。ナニ驚いてるの?コマドリちゃん捜しに夢中で、ワタシとのデートを途中放棄したのはオニイサンよ。こんな傷まで付けておいテ」
驚くラビに、謎の生き物がプンプンとわざとらしく怒る。
その指差された顔は、片面だけどろりと溶けたような火傷の跡があった。
ピエロのような出で立ちで、でもその体格はどう見ても人じゃない。
奇妙に長い腕に大きな顔、曲がった足。
映像や資料では見たことがあるけど、実物を見るのは初めてだった。
もしかしたらこれが、ラビが地下で出会ったAKUMA…?
「お話、聞かせてモラッタわ。ここまでバレちゃ仕方ないデショ?村長ちゃん」
「ぅ、ぐぅ…っ」
何故。
そんな恐怖の色を称えた目で、村長さんがAKUMAを見上げる。
首を突き破る針は、AKUMAの鋭く伸びた爪そのもの。
「割と楽しかったワヨ。ばいバイ、」
「待っ…!」
咄嗟に制止をかけるもの、AKUMAは迷いなくその爪を真横に皮膚を引き裂いた。
ぶしゅっと飛び散る赤に、村長さんの体が呆気なく崩れ落ちる。
「なんで……その人を殺す必要ないだろ…!」
珍しく敬語でないアレンの声が響く。
「あラまぁ、可愛いボウヤね」
だけどAKUMAは常に飄々と、気味の悪い笑みを称えていた。
「意味はあるワ。ワタシお腹が減ってるノ。オニイサンもコマドリちゃんも、食べ損ねタシ」
コマドリちゃんって…もしかして私のこと?
こっちを見てにんまり笑うAKUMAに、思わず顔を顰める。
この喋り方といい、この姿形といい。
顔は半分、火傷で崩れていたけど…間違いない。
あの地下で見えた光景に出ていた。
クロル君を殺した、あのAKUMAだ。
「新鮮なうちに頂かないト」
不意にAKUMAがその長い針のような爪の先端を、ドスリと村長さんの頭に付き立てる。
「頂きマス♪」
ゴクゴクと何かを嚥下していくような音。
AKUMAの白い爪が先端から赤黒く染まっていく。
「ううン、ちょっとイマイチかしら?」
何かを味わうように、赤く長い舌で己の唇を舐めるAKUMA。
何、あれ。
もしかして…人の脳を、吸ってる?