第27章 真相
「儀式は必要なものだ。この村の糧となり、彼らは充分に役立ってくれた。私らが生きる為に」
「…そうやって、外部の人間もあんたらの言う"糧"にしたんだろ」
両手を広げ高々と声にする村長さんに、ラビが心底毛嫌うように眉を潜める。
「そんなの、ただの殺人さ」
確かに、ラビの言うことは正しい。
でもこの閉鎖的な村の中では、きっと通用しない常識なんだ。
「…貴方達にはわかりますまい。黒の教団などという、組織の保証がついている貴方達には。私達は弱者。生きる方法を選ぶ余地などない」
ふっと笑みを浮かべて、村長さんは首を横に振る。
その言葉には黙っていられなかった。
「…保証なんて、ありませんよ」
黒の教団とこのデンケ村を比べる気はない。
そんなことしてもなんの意味もない。
だけど、彼らは常に危険に命を曝している。
エクソシストだけじゃない。
ファインダーだってそう。
此処で、命を落とした彼もまた。
「貴方の言う糧にさえも、ならずに消える命もある」
今回の任務では、きっとイノセンスは見つからないだろう。
あの怪奇現象はイノセンスのものではないと直感したから。
そんな中、命を落としたこのファインダーさんは、それこそ犬死と呼ばれてもおかしくない。
ぎゅっと強くマントを抱く手に力がこもる。
「…彼は、ちゃんと私達の糧に」
「っ、知った口で語らないで下さい!」
そんなふうに口にしていいのは、同じ道を生きてるトマさんだけだ。
つい荒げてしまった声で言葉を遮る。
「人には人の、人生がある。それぞれに生きてる道があるのに…ッ」
クロル君は一度だって、死を望んでいなかった。
その思いを感じたからこそ居た堪れない。
「この人の死を、勝手に肯定なんてしないで下さい…っ」
溢れた思いは目頭を熱くする。
駄目だ、こんな所で泣くな。
今は泣いてる場合じゃない。
「…椎名殿」
俯くマントを抱いた私の腕に、そっと触れる手。
顔を上げれば、静かにトマさんと目が合った。
「…ありがとうございます」
にこりと微笑む顔。
その一言で、胸がぎゅっとなる。