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科学班の恋【D.Gray-man】

第27章 真相



「ああでもしないと、私らがあの悪魔に食われていた。…あんた達には、わからんだろう。絶対的な強さを持った者に、与えられる恐怖を。私らには戦う術などなかった」



憎々しげに溢れる村長さんの言葉に、言葉が詰まる。
その気持ちが、私にはわかったから。

私にはAKUMAや千年伯爵と戦う術はない。
どんなに力になりたくても、ラビ達の隣に立って一緒に戦うことはできない。
その背中を見送って、無事でいてと祈り続けることしか。
間接的なサポートはできても、いざ目の前で彼らが危険に曝された時、私にはその場で彼らを救える程の力はない。



それがどんなに悔しく、苦しいことなのか。



だから村長さんの気持ちは否定できなかった。

自分の意志を貫くのに、気持ちだけでは進めない。
それを叶えられるだけの力も、必要な時はある。
故に絶対的な力で目の前を閉ざされた時、人は恐怖し保守に回ることが多い。



「……怖いですよね。何もできない自分の非力さと、世界の無情さは。私も、世の中は誰にでも平等じゃないと思う」



…だけど。



「でも、その絶対的な恐怖をクロル君に与えたのは、そんな貴方なんですよ」



あの子の痛みは、痛い程に感じた。

空腹の辛さと。
斬撃の痛みと。
死への絶望と。

訳もわからず殺されて、あんな形でこの世にとどまる程あの子の心は彷徨っている。
誰かにあの痛みを、知って欲しかったのかもしれない。



「もう止めましょう。そのAKUMAならもういません。これ以上、犠牲を出さないで下さい」



これ以上、クロル君のような悲しい魂を増やしたら駄目だ。
村長さんもクロル君に対して、すまないと言っていた。
仕方なく儀式をやってたのなら今からでも遅くない。

そう、僅かにでも希望が見えた気がしたのに。



「…犠牲ではない」



それは簡単に、切り捨てられた。

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