• テキストサイズ

科学班の恋【D.Gray-man】

第25章 駒鳥回り












ひんやりと深く冷たい地下室。

訳もわからず連れて来られて、それを"儀式"と彼らは言った。

ぐるぐる周りを取り囲む大人達。

それぞれが口ずさむのは、駒鳥の歌。

"お祈り"だと称して、掲げられたのは大きな刃物。








ごめんなさい

ごめんなさい








何が悪いのかもわからない。

けれど、きっと何かしてしまったんだ。

だって皆、あんなに優しかったのに。

一緒に助け合って、暮らしてたはずなのに。








おねがいだから

ころさないで








それを"儀式"と彼らは言った。

すまない、と申し訳なさそうに謝罪して。

振り下ろされたのは、大きな刃物。

ざくりと肩に食い込む刃に、肉が断ち切れ鋭い痛みが刺した。








し に た く な い








恐怖したことは、ただ一つ。

切望したことは、ただ一つ。

その気持ちに突き動かされるままに、何処ともわからない暗い闇の中逃げ出した。

追いかけてくる無数の足音。

見つからないように、体を丸めて逃げ込んだのは岩場の隙間。

ひゅーひゅーと自分の息だけが、喉奥で木霊する。








どうか、みつかりませんように








カタカタと震える体を押さえつけて、ただ必死に祈った。

誰でもいい。

誰でもいいから、助けて。

キリキリと空腹が痛む。

血が溢れる肩から、どくんどくんと痺れた感覚が広がっていく。

暑いような寒いような、そんな感覚さえ麻痺した頃。

いつの間にか外は静寂に包まれていた。








どうか、みつかりませんように








何度も何度も心の中で復唱しながら、恐る恐る隙間に顔を寄せる。

神様でも死神でもなんでもいい。

此処から生きて出してくれるのなら。








どうか、みつかりませんよう───








ふっと、隙間の入口に一つの影が差す。

見上げた先。

隙間いっぱいに埋め尽くされていたのは、ぎょろりと開いた目玉が二つ。

骨のように真っ白な肌に、にんまりと笑う赤く裂けた口。








みィつけた








最期に見たその顔は。








ばいバイ、コマドリちゃん








まるで、悪魔のようだった。












/ 1387ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp