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科学班の恋【D.Gray-man】

第25章 駒鳥回り



「な───…」



じゃあ後ろには誰が。
そう問いかけようとして、"それ"に気付いて失敗した。



「…っ」



ゆらゆら ゆらゆら



駒鳥回りをするように私の周りを取り囲んでいる黒い影達。

いつからいたの。



ゆらゆら ゆらゆら



僅かに体を揺らしながら、頭を凭れて私を見下している。

恐怖で顔が上げられない。



ずる、



唐突にぞわりとそれは背筋を這った。
強烈な視線を背後に感じながら、ぞわぞわと首の真後ろを悪寒を感じる何かが這う。

振り向けない。
振り向いたら駄目だ。

それだけ強く警告が頭の中で鳴り響いて、なのに見ないようにと目を瞑ることは何故かできないまま。



ずる、



「ッ…!」



首筋を這う"何か"が、ずるりと私の肩に垂れた。
それはぼんやりと輪郭を保った真っ黒な人の腕。



「ひ…っ」



人の腕の形をしているのに、影のように間接なくぐにゃぐにゃと曲がっている。
辺りは真っ暗なはずなのに強烈に私の視界に飛び込んできた。

同時に理解する。
これはイノセンスの怪奇現象なんかじゃない。






「みつケたタミツみつ」

「ミツけたみツつけた」

「みミミつケみつミぃツけた」






なんども繰り返されるノイズのように不協和音を口にして、ぼうっと私を取り囲む影達が手を繋いで囁き出す。



ゆらゆら ゆらゆら



体を揺らして。



駄目だ、逃げないと

助けて、誰か

駄目、誰もいない

自分で、逃げて

走って、此処から



カタカタと恐怖で揺れる足に鞭打つように踏ん張る。
それに反応するかのように、肩を這う何かがどんどん重くなる。

其処から動けずに、黒い影に取り囲まれていく。
何故か瞑ることのできない私の目は、必死に地面をただただ凝視していた。






暗い

寒い

冷たい

痛い






色んな感情が洪水のように流れ込んでくる。
キリキリと空腹で痛むお腹。
その感覚さえも麻痺してくると、暑いのか寒いのかも朧気になっていく。

それでも。






"みィつけた"






恐怖だけは最後まで脳裏に焼き付き離れなかった。










ごめんなさい

ごめんなさい

おねがいだから



───ころさないで









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