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科学班の恋【D.Gray-man】

第25章 駒鳥回り



「っ…」



なんでこんなことしてるんだろう。
遊んでる暇なんてないのに。

いや、それより。



「アナたは、ダぁレ」



再度問いかけられる。
その声は真後ろ、私の背中から。

つぅ、と冷や汗が頬を伝う。

知らない声。

クロル君の素っ気無い声とは違う。
無機質でまるで壊れたラジオのように、高い声と低い声が合間に混じり合った奇妙な声。



「………」



怖い。

顔を隠した両手を離すことも、立ち上がって逃げ出すことも、クロル君を呼ぶこともできない。
じっと、体は金縛りにあったみたいに動かないまま。
じっとりと誰かに見られている視線だけを、強烈に背中に感じていた。



どうしよう

どうしたらいい

逃げないと

誰から?

逃げないと

何処へ?



石のように固まった体に鞭打つように、ジリ、と一歩屈み込んだまま足を動かす。










「あアああなアナたは、だダあだぁレ」










ぞわり



まるで這うようなノイズの混じった声が、追いかけるように投げかけられる。

ひゅっと喉奥で声にならない悲鳴が上がる。



答えないと。



漠然と、そう思った。

じゃないときっと私の負け。

負けたら駄目だ。

負けたら───










食べられる










「ク…ロル、君…?」






じっとりと冷や汗が滲む掌で顔を覆ったまま、恐る恐る答える。

一緒に遊んでいたのはクロル君だけ。

…その状態のままであれば、後ろに立って問いかけているのも、きっと───






「───おねえさん、」






か細い、消え入るような声が届く。

─私の真正面から。




「ッ…!」




瞬間、反射的に思わずガバッと顔は上がって、見えたのは目の前に立つクロル君の姿。

僅かに首を横に振って、






「はずれ」






彼は、笑った。






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