第25章 駒鳥回り
だれが駒鳥 殺したの?
それはわたし と 雀が言った
わたしの弓羽に刃を添えて
わたしが駒鳥 殺したの
今朝、遊んだ時のように。
クロル君のか細い歌声が僅かに届く。
だれが駒鳥 死ぬのを見たの?
それはわタし と 蝿が言った
息絶えるその瞬間を
わたしの無数の目が 見届けた
か細い声にノイズのような音が混じる。
高いような、低いような。
…あれ?
歌ってるのはクロル君一人のはずなのに。
歌声は、まるで私の周りを回るように。
だれが駒鳥 その血を受ケた?
それはわタし と 魚が言った
わたしの小さな鱗の皿で
赤い雫の 水面を揺ラす
顔を隠した指の隙間から、ゆらゆらと揺れる何かが見える。
真っ黒で、ぼんやりとしたもの。
まるで影のような───
だれが駒鳥 食べチゃった?
それはわタし と あなタが言った
骨と皮と血と肉ト
わたしが残らず 咀嚼シた
影?
「かわいそうな駒鳥のため、鳴り渡る鐘を聞いたとき」
か細く儚い声。
これはきっと、クロル君の声。
だけど。
「啜り泣く小鳥タちの中デ、ひトリ陽気に笑っテる」
この声は、誰。
雑音が時折混じったような、急に高くなったり低くなったり。
…明らかに普通じゃない人々の声。
………人々?
待って、そもそも。
此処にいるのは、私とクロル君だけだったはず。
じゃあ…さっきから視界の端に、ゆらゆらと見える私の周りを回っているものは───
「あなタは、だぁレ」
誰。