第25章 駒鳥回り
「あの歌詞、結局誰が駒鳥食べちゃったのかな」
歌の歌詞もそんな感じだった。
最後に意味深に問いかけられる歌詞は少し怖い気もしたけど、童謡って割とそういうもの多いから。
奥が深いようで簡単だったり、簡単なようで深かったりするからなぁ。
童謡の意味って難しい。
「…人間」
「え?」
ううん、と一人考えていると、不意にぽつりとクロル君が言葉を零した。
「人間が、食べた」
そう、迷いなく。
「人間?」
小さく放たれた言葉を反復すれば、繋いだ手はそのままにクロル君が覇気のない顔で私を見上げる。
光のない暗闇の中、何故かその暗い彼の瞳の色を知ることができた。
「みんな、おいしいって言ったんだ」
真っ暗な深い闇のような色は、どんよりとどこか濁っているようにも見えた。
「でも、ぼくは食べられなかった。ここで、ひとりぼっちで」
「クロル君…?」
握った手を引かれる。
「ここは、寒い。寒くて寂しい」
思った以上に強い力に引っ張られ、思わず中腰になる。
ぐっと近くなるクロル君との距離。
「お腹はいつも、からっぽで。でも、ぼくはだめだって」
言ってる意味がわからない。
だけど嫌な予感がする。
ざわざわと背後から何かが忍び寄るような、そんな微弱な恐怖。
「ぼくの体、弱いから。だから、だめだって」
「…駄目…?」
駄目って、何が?
意味がわからない。
「ここは寂しくて、寒くて、冷たい。…もう、ひとりぼっちは嫌なんだ」
ぐるぐると情報を処理し切れない頭を抱えていると、目の前のクロル君が私の腕を掴んで。
「おねえさん、ぼくと遊んでくれる?」
ゆっくりとその無機質な口元が
縋るように問いかけた。