第25章 駒鳥回り
「こっち」
「こんな所に通路あったんだ…」
クロル君に手を引かれて暗い岩場の道を進む。
暗くとも、多分クロル君には慣れた場所なんだろう。
引かれるままについていくと開けた部屋に出た。
「あれ…此処?」
今まで通ってきた瓦礫の部屋とは違う。
暗くてはっきりとは見えなかったけど、なんとなくそう感じた。
よく見てきた瓦礫の山は見えなかったし、岩肌の壁もなんとなく荒削りじゃなく見えた。
そしてひんやりと寒気がする。
「ねぇ、クロル君…私が一人で喋ってたって、本当に?」
繋がれた小さな手の先に視線を巡らす。
暗くて顔は見え辛かったけれど、纏った雰囲気はやっぱり今朝見たクロル君のまま。
恐る恐る問いかければ、その顔は小さく頷いた。
一人で喋ってたって…どこから。
まさか、言い合いしてた時も?
まさかのまさか、ラビと仲直りしてた時から?
……いやまさか。
そんなの一人芝居でやってたらそれこそホラーです。
見た目的に色々と。
「それじゃあラビは何処に…クロル君は知ってる?」
再度問えば、今度は首を横に振られる。
どうしよう。
いつからはぐれたんだろう、心配になる。
「…あのね、クロル君。私、仲間を捜したいの。その危ない場所って、どう危険なの?」
クロル君は危ないからって、その先に行かせないようにしてくれたけど…もしかしたら其処にラビがいるかもしれない。
「…あそこには、人じゃないものがいる」
「人じゃないもの…?」
「あれは、嫌い。ぼくたちを笑うから」
ぼく"たち"?
首を傾げれば、じっとクロル君の目が間近に見上げて。
「…おねえさんは嫌いじゃない。ぼくと遊んでくれたから」
すっと視線を外された。
遊んだって、あの今朝の駒鳥回りのことかな?
感情の起伏が見当たらない子だからか、嫌いじゃないと言われればなんだか嬉しくなる。
「クロル君強かったね、駒鳥回り。誰でも当てちゃうから」
「……負けたら、たべられるから」
「食べられる?」
ああ、そっか。
"かごめかごめ"では負けたら鬼になるけど、"駒鳥回り"では負けたら食べられるっていう設定の遊びだったっけ。