第3章 私の休日。
「あ、もう行かなきゃ」
そんな雑談をしていたら、ふと目に入った腕時計の示す時間に意識が向く。
これ以上話し込んでいたら、本当に遅刻してしまう。
アレンとリナリーには悪いけど、言葉短めに私は二人に手を振った。
「ごめんね、急いでるから!」
「あっ」
「行っちゃいましたね…」
「南さん…誰と遊びに行くんだろう?」
そう不思議そうに呟く二人の声は、走り去る私の耳には届かなかった。
「───まずい、時間過ぎちゃってる…っ」
足早に教団の出入口に向かいながら確かめた腕時計の針は、待ち合わせ時刻をあっという間に過ぎ去ってしまった。
普段おちゃらけてることが多いけど、時間はちゃんと守るラビだから。
慌てて走る速度を上げた。
「ラビに怒られる…!」
「ん?」
そういう時に限って、足止めを喰らうというか。
一番顔を合わせ難い人に、会っちゃうというか。
「おー、南か」
「は、班長…」
最後の廊下の角を曲がった途端、タイミング良く書類を手に現れたのはリーバー班長だった。
いつもの炭酸飲料が入ったコップを片手に、ストローを口に咥えてる。
そんな姿に思わず足が止まる。
「どうした?そんなに急いで。今日は確か非番じゃ…」
そう言いかけた言葉が、私を目にして止まった。
そ、そんなまじまじと見ないで下さい。
恥ずかしい。
「…は、班長」
「………」
「…班長?」
「え?あ、ああ…?」
反応がないリーバー班長に恐る恐る声をかければ、一瞬沈黙を作って、はっとしたようにその目が瞬く。
「す、すみません班長。お仕事中に。急いでいるので───」
頭を下げて、逃げるようにその場を後にしようとした時だった。
「お、いたいた。南ー」
リーバー班長の後ろから、ラビの声が届いたのは。