第3章 私の休日。
「♪」
待ち合わせの場所に近付く頃、私は少し上機嫌になっていた。
理由は単純。
単純な人間でごめんなさい。
待ち合わせ場所に向かう途中で顔を合わせた研究員の皆が、私を見て最初は驚くものの、すぐに似合ってるってこの姿を褒めてくれたから。
そんなに良いパーツを持ってる私じゃないけど、まぁ元々が女性の欠片もない格好をしてたから。
同期であるジョニーやタップにはデートかと、からかわれたりもしたけど。
でも休日を楽しんで来いって、皆優しく見送ってくれた。
やっぱり私の周りは良い人達ばかりだなぁって、改めて思う。
「あれ。南さん?」
上機嫌に、でも小走りで急いで向かっていたら不意に高いトーンの声が響いた。
「あ、リナリー」
「わっ、南さん、今日は一段と綺麗ね!」
視線を向ければ、そこにはツインテールの美少女が。
私を見た途端、手を合わせて目をキラキラ輝かせる。
「本当だ」
その後ろからひょっこりと顔を覗かせたのは、白髪の少年エクソシスト。
アレン・ウォーカー。
アレンとリナリーって、本当によく一緒にいるよね…。
まるで恋人みた…げふげふ。
いえ、なんでもありません。
「そのワンピース、凄く似合ってますね」
「あ、ありがとう」
お爺さんみたいな真っ白な髪をしていても、AKUMAのシンボルである星形のペンタクルと同じ跡を左目の上に刻んでいても。
にこりと微笑む顔はとっても紳士的。
そんなお世辞に聞こえないアレンの褒め言葉に、ドキリとする。
お、落ち着け私。
相手は年下だから。
未成年だから!
「出掛けるんですか?」
「うん、ちょっと街まで」
「もしかしてデートとか?」
「あははっ、まさか」
目をキラキラさせてリナリーが聞くものだから、つい笑ってしまった。
何度目の質問だろう、これ。
そんなに私がお洒落するのは珍しいのかな。
「遊びに行くだけだよ」
「ふぅん…珍しいね。南さん、休日はよく書庫室にこもってるのに」
あ、バレてる。
「私も偶には羽を伸ばしたりするよ?」
苦笑混じりに首を横に振る。
偶にはね、偶に。