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科学班の恋【D.Gray-man】

第85章 そして ここから



「ま。それっぽいことを言っちゃあいるが、最終的に今ここで答えを出さなくてもいいと思ったんだ。だから進めた」



不意に、リーバー班長の顔が茶化すように笑う。



「そういうことは、自分がこの世と別れを告げる時にでも出せばいいかなってさ。…ダグとの件で、そう思えたんだ」



ダグ君。
ラビの戦友で、真っ直ぐな志を持っていた青年。
故に千年伯爵に救いの手を伸ばし、ラビの手によってその肉体を散らした私達の仲間。

彼のことについて班長と言葉を交わしたことは、過去一度もなかった。
だから班長が今口にしたダグ君は、生前の彼じゃなくて…あの、この世に意味を無くして彷徨っていた魂であるダグ君のことだ。



「逝った奴らの気持ちなんて、生きてる俺達には知りようがない。だからそういうもんは、俺がそっちへ逝った時にでも教えて貰おうと思ったんだ」



方舟の中だけど、まるで本物の空のように高く澄み切った青空を班長の目が仰ぐ。



「それまでは、生きている間に見ていられるものを大事にしていたい。コムイ室長やアレン達エクソシストや、科学班に今度入団してくる新しい部下達や。見なきゃいけないもんは、沢山あるからな」



本物のようだけど、本物じゃない。
それでも幻想的に見える青空は、美しいと言えるものだろう。
だけどリーバー班長の目は呆気なくそこから外れると、同じ高さへと戻った。
合わさるのは、私と、彼の瞳。



「こっちの世界じゃ構う奴らが多過ぎて、余所見してる暇もない」



今、班長が見ているのはまやかしの世界じゃない。
その世界に立つ、現実の私だ。



「それが俺の踏み出し方だ」

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