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科学班の恋【D.Gray-man】

第85章 そして ここから



「ラビは新本部の見取り図、全部把握してるんだよね?」

「ああ、それなら」



先にブックマンと新本部の下見に行ってたもんね、前。



「じゃあ明日、食堂の場所教えてくれる?私まだ把握してなくて」

「ん、お安い御用さ。共同洗面所の場所はわかんの?」

「うん」

「んじゃ明日、其処でな。科学班の稼働はまだ先だろ?朝飯食べよーぜ。9時辺りでどうさ」

「わかった。じゃあまた明日、9時にね」



また。
そう言って軽く手を振って別れる。
いつものように、呆気なく。

場所は変わるけど、変わらないものはある。
クロス元帥だけじゃなく、ラビや私だって。
住まう所は変わっても、変わらない顔を向け合って、また一日をこうやって始めるんだろう。

…それから、



「じゃーな、はんちょ。あんまり悪酔いすんなよ~」

「え?ああ…南っ悪いが、あいつらも悪酔いしないようつき合ってやってくれねぇか」

「はい、勿論!私も決起会、したいですし」

「…お前も悪酔いするなよ」

「はは…善処します」



科学班の皆、とも。

疲れた様子で肩を落とすリーバー班長に呼ばれて、小走りに駆け寄る。
さっきまで騒いでいたジジさん達は、どうやら先にラボに向かったようだ。
とぷりと薄い方舟ゲートの入口に顔だけ潜り込ませれば、先に踏み込んでいたラビが慣れた様子で沢山ある方舟内の扉の中から一つ、選んで通り抜けていった。

扉によって繋がる場所は、新本部の各地に散らばっているらしい。
私はまだ全部把握してないけど、多分自室に近い出口を選んだんだろうな。

派手なラビのオレンジ頭が消えれば、其処に続いているのは白い煉瓦の並木道だけ。
クロス元帥もジジさん達も、皆足速いなぁ…。

………余程飲み会したかったのかな。



「どうした?立ち止まって。俺達も行くぞ」

「あ…はい」



私の横でゲートを通り抜けたリーバー班長が、振り返って催促する。
同じく体全部で通り抜ければ、塵一つないまっさらな道はまるで桃源郷のように、浮世離れしていた。

何度か調査で方舟内に入ったことはあるけど、まだ慣れないなぁ…。
旧職場の教団が、暗く分厚い段幕を重ねていた、名の通り黒い洋装の建物だったからか。
静かに煌めくような白い世界が、なんだか眩しい。

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