第85章 そして ここから
✣
「来たか」
「えっリーバー班長っ?」
「うわっはんちょ!?」
「…なんだ揃いも揃ってその反応は」
歩みの遅いクロス元帥を急かしながら、足早に向かった方舟ゲートが設置してある広間。
そのゲート入口には、腕組みをして仁王立ちするリーバー班長の姿があった。
思わずラビと並んで急ブレーキをかけてしまうくらい、威風堂々と仁王立ちしている班長の姿が。
い、いやこれは…ちょっと驚いただけです、はい。
「てっきりラボで待ってると思ってたんさ」
「来るのが遅いから出向いただけだ。…というか、なんでクロス元帥までいるんですか?」
「俺は南に連れ添っていただけだ」
「す、すみません班長。私がぐずぐずしていたから、元帥もそれにつき合ってくれただけで…っ」
「ぐずぐず?」
怖い顔の班長には、一にも二にも謝るに限る。
慌てて深々と頭を下げて、これ以上怒られる前にと先手を打った。
「なんだ、ぐずぐずって。何か…」
「南は、置いていくものに別れを告げていただけだ。お前達と違ってな」
「はい?」
「ち、ちょっと元帥…っ」
その言葉には色々と語弊がある気が…!
ほら!リーバー班長、変な顔してるから!
「すみません班長!すぐに新ラボに直行しますから…!」
「ああ、ああ。いーんだよ南」
「ラボの整理整頓なんて口実だし」
「え?」
「ば…っお前ら!?」
聞いた第三者の声に顔を上げれば、わらわらと後ろの方舟ゲートから顔を出す科学班の皆。
薄い水面みたいな輝く膜から、にょきにょきと顔だけ出してるところが、生首が浮いてるみたいでちょっと絵面的に怖い……じゃない。
科学班一同、皆が苦笑だったり含み笑いをしてる。
あれ…班長、怒って待ってたんじゃないの?