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科学班の恋【D.Gray-man】

第85章 そして ここから



「だからその白衣には思い入れが…っ」

「その思い入れある白衣は一体何着あるんさ。いっぱい持ってんだろ」

「そうだけど…ってクロス元帥!ちゃんとついてきてますかっ?」



目敏く気付いた南が、逃さないとばかりに張った声を飛ばしてくる。
其処にいるのは、言葉通りの戦場ともなる科学班として揉まれた南の姿だ。



「ああ、ついて行くからそう騒ぐな。煩いのはそこの番犬二号だけで充分だ」

「なんさ番犬二号って…」



自分のことを言われている自覚はあるのだろう。
むすりと納得いかない表情を見せるラビに、クロスははんと笑った。



「番犬は番犬だ」



騒がしくはあるが、彼らが傍にいれば南の心に下手なものが滑り込むこともないだろう。



「そういけ好かない顔をするな。褒めてやってるんだ」

「どこがだよ。つか二号ってなんさ、一号誰だよ」

「なんだ、知りたいのか?」

「…やっぱいい」



番犬一号と名付けたのは、初めて椎名南という人物を真正面から見た、あの科学班で行われていた飲み会に参加した時だった。
今のラビのように、南の隣でクロスを胡散臭そうに見ていた栗毛の男だ。

その頃の南はまだまだ成長途中の原石のような女だと思っていたが、見る度に成長していった。
南自身が一人で培ったものではないだろう。
その傍らに、彼らがいたのもまた事実。



「情けが不足しているこの世だ。お前らみたいなお節介焼きがいて、丁度良いんだろうよ」



去るこの地も、新たに踏む地も、南が歩み続けるには決して優しくない地だ。
だからこそ、彼らのような存在は必要なのだろう。



「言ってる意味がちょっとわかんねっス」

「私も」



顔を見合わせ同じに首を傾げる二人に、肩を竦めただけでそれ以上クロスは口を割らなかった。



「わからんならわからんでいい。ちんたらしてたら番犬一号が噛み付きに来るぞ」

「ちょい待て。もしかして一号って…」

「え?ラビわかったの?誰っ?」

「えー…あー…いや…」

「まさか…婦長さんとかっ?」

「めっさこえーなその番犬!」



自覚などなくても良いのだ。
そこに確かな繋がりがあれば、それだけで。









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