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科学班の恋【D.Gray-man】

第85章 そして ここから



「だ、大丈夫、だよ」

「オレが気になんの。クロス元帥に泣かされたなんて、アレンが聞いたら激怒するさ」

「馬鹿弟子が激怒したところで、痛くも痒くもないがな」

「ちょっと、積もる話をしてただけだよ。それで少し、しんみりしただけ、だから」



クロス元帥の言う通り、本音を伝えたのは本当のこと。
元帥が受け止めてくれたから、涙脆く感じてしまったことも。
でも泣いていない。
涙は流していないはずだけど…変な顔でもしていたのかな。
ラビの私を伺う目は、真剣だったから。



「ならいいけど…リーバーはんちょが南を捜してたさ。新しいラボでの机や棚の配置で、研究員全員収集ってさ」

「え?そうなのっ?」

「引っ越し当日から忙しないな。科学班の連中は」



確かにクロス元帥の言う通り、忙しない気はするけど。
でもリーバー班長の命令なら急いで行かなきゃ。
下手したら、新本部稼働一日目から班長のお怒りを喰らうことになるかもしれない。
それだけは避けたい。



「ありがとう、ラビ」

「ん」

「てことで、クロス元帥も一緒に行きましょう!新本部」

「あん?なんで俺が」

「そろそろ戻らないとって言ってたでしょ?丁度いいから私と一緒に行きましょう」



そしたらクロス元帥の雲隠れも阻止できる。
ラビにお礼の頭を下げて、逃さないように元帥の腕を掴む。
眉を潜めたものの、言動には自覚があったんだろう、元帥も下手に抗うことはしなかった。



「南はもういいのか?」

「え?」

「見納めとやらは」

「………」



私が此処を訪れていたのは、職場の見納めじゃなく、置いていく仲間達への心残りから。
それを知っている元帥が敢えて口にしなかったのは、ラビが隣にいたからか。
わからないけど、答えはもう決まっていた。



「はい。大丈夫です」



だって私の背を押してくれたのは、他ならないクロス元帥だったから。



「…なら戻るとするかな」



じっと私の目を見ていた元帥の顔が、不意に和らぐ。
大人しく腰を上げる元帥に、一気に首が上に上がる。
高身長なラビより更に大きな背丈だから、間近に立つと威圧感あるけど…でも今はそこに圧なんてものは、感じなかった。









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