第85章 そして ここから
「ティムキャンピー」
凝視して問いかけたけれど、元帥の目は私へと向いてはいなかった。
その鋭い隻眼は天井のティムが出ていった通気口へと…あ。
もぞもぞと、出ていく時と同じ動作で入ってきたのは、金色の丸いボディ。
ティムキャンピーだ。
クロス元帥に呼ばれたティムは、その意図が読めているかのように一直線に扉へと飛んだ。
丸い体が、ぽちょんと扉の取っ手に止まる。
その重みにガチャリと下がる扉の取っ手。
「火ば───ん"ッ!?」
あ。
さっきまでビクともしなかった扉が、一匹のゴーレムの重みで簡単に開いた。
開く両扉に、巨大化させた鉄槌を振り下ろそうとしていたラビが、勢いを止められずに足場をつんのめる。
そしてズダンと、見事に真正面から落下した。
「と…扉が、開いた?」
え。嘘。なんで?
ティムが取っ手に乗っただけで開いたってことは、鍵は掛かってなかったってことだ。
でもなんで?
さっきは押しても退いても、元帥の手を借りても開かなかったのに。
…やっぱり古びて一時的に、建付けが悪くなってたのかな…。
「いっちち…」
「ら、ラビ…大丈夫?」
「っ南!やっぱり此処にいたん───…は?」
「?」
「なんで、クロス元帥と一緒に…」
あ。
そういえば今私、思いっきり元帥の胸を借りて抱きしめて貰ってるんだった。
「いや、これは…っ」
「折角の逢瀬を…よくも邪魔しに来たな。ブックマンJr.」
「元帥!」
急いで抜け出そうとすれば、ぎゅっと大きな腕に囲われ抱きしめられる。
そういうこと言うから誤解されるんですよ色々と!
「なんだ、本当のことだろう?お互いの本音を語り合って、心を寄り添わせただろう」
「そ…っ」
それは、間違ってないかも、しれないけれど!
なんか言い方が、誤解される気が…!