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科学班の恋【D.Gray-man】

第85章 そして ここから



「俺は魔法使いじゃない、科学者だ。なんでも、という訳にはいかないがな…南のことなら、見ていたからわかる」



黒い手袋をしたクロス元帥の指先が、さらりと私の髪を梳くように撫でる。



「俺としては不服だが、南にとっては大切なもんだ。その想いが結び付いたのは、南の中で心が育った結果だったんだろう」

「そう…なんです、かね」



本当にクロス元帥の言う通りなら…この想いは繋がって、いるのかな。
タップやマービンさんやハスキンさん達、皆と。

繋がっていれば、切れないのかな。
薄れていっても、記憶の底に置いてけぼりになってしまっても。
この痛みも、忘れてしまうことになっても。

心に、残していられるのかな。
皆のこと。



「じゃあ…」



私の中に、在り続けていられる?



「…切っても、切り離せない…ですね…」



目の奥がぎゅっと熱くなる。
声は思った以上に掠れていて、それでも絞り出そうとすればより震えてしまった。

未だに私の足場は不安定で、踏み締められたかと思えば揺れ動くことも多い。
それでも、その先に見つけたひとがいるから。
手を握っていたい、共に立っていたい、支え合っていたい。
そんなひとを見つけられたから。

今ここにある私の足場は、皆と巡り合って育んで、そして別れを告げた過程で辿り着いたものなら。



「ああ。そうだな」



情けない私の声に、元帥は何も触れなかった。
代わりに、震える肩に大きな手が優しく触れる。
そのまま引き寄せられた体は、大きな胸板と太い腕に包まれた。



「例え切り離したくなっても、離せないもんだろう」



涙を誘う程に、温かい声で受け止めくれて。



「一生繋いでいく、南の感情の一部だ」



私のいちばん欲しい言葉を、くれた。





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