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科学班の恋【D.Gray-man】

第85章 そして ここから



「ああ、ぼろぼろ…」



ただでさえ蓄積していたダメージに、今回で決定打を下された感じ。
拾い上げた白衣は本物の雑巾と化していた。



「汚いから触るな」

「………」



誰が汚くしたと。
と言いたいけど、相手は元帥格。
容易くは言えない。



「それより、南もこっちに来て座れ。ずっと立ちっ放しも疲れるだろう」



それは、まぁ…。

元帥からの配慮を無下にする訳にもいかない。
仕方なくクロス元帥の隣を人一人分空けて、腰を下ろ───



「そこじゃない」

「は…いっ?」



そうとして、失敗した。
ぐいと腕を引っ張られて、すとんと腰を下ろしたのは元帥の、



「げ、元帥?」

「軽いな。南は」



いやそうじゃなくて。
嬉しいお言葉だけどそうじゃなくて。



「元帥の膝に乗るなんて失礼極まりないかと…!」

「汚い床に座らせる訳にはいかんだろう」



座らされたのは、胡座を掻いた元帥の片膝の上。
いきなり目の前にくる元帥の顔に、思わず羞恥心が湧く。

ち、近い。
そして顔が良い。
半仮面や眼鏡や真っ赤な長髪の強烈な印象で見逃しがちだけど、凄く顔が良い。
神田やコムイ室長のような美形とはまた違う、男前な顔だ。



「男からの好意は利用するだけ利用しろ。女の特権だ」

「そ、そういうものですか…?」

「そういうもんだ」



ええと…はい。

しっかり掴まれた腕は放してくれそうにない。
白衣は雑巾扱いされてしまったけど、私を体を張って庇ってくれるところを見ると、やっぱり根は優しい人なんだろうなぁと思う。



「それに鴉共の監視がしつこくて、碌に女に触れられていないんだ」

「え、あ、あの…っ」



はぁと大きな溜息をついて、元帥の頭がぽすりと私の肩に…か、肩に乗ってる。
元帥の、顔が。

あ、なんか良い匂いがする…癖は強いけど、近くで見れば女の私より綺麗な髪してるし…。



「あの、元帥…」

「少しでいい。肩を貸してくれ」

「……はい」



そんなふうに言われたら、断れないよね…。
元帥の女好きは有名だけど、女性を軽く扱ってる感じは全くしないから。

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