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科学班の恋【D.Gray-man】

第85章 そして ここから



「どうするも何も、外から開く仕様ならそれまで待つしかないだろう」

「待つって誰を?もう皆新本部に引っ越し作業を進めてるから、こんな所に人は来ませんよ」

「そういう南は来ているのに?」

「私は…偶々、です」

「………」

「それより、科学班の皆も、もう新本部に移動してますから。此処に来るのは科学班くらいなので、誰かが気付いてくれる可能性は限りなく低いですよ」



問題はそこだ。
どんなに待っていても、状況は好転しない気がする。
不安を顕著に出せば、不意にクロス元帥の隻眼が天井を見上げた。



「なら呼ぶしかあるまい」

「呼ぶって、どうやって…」

「ティムキャンピー」



あ。

元帥の呼び声に、私の肩に乗っていたティムがふわりと離れる。
その視線の意図を理解しているかのように、迷いなく天井の小さな通気口に向かうと鋭い歯で器用にこじ開けた。
丸いもちもちのボディをどうにかして、隙間に滑り込ませる。
ちょっとつっかえてたけど。
最近、また一段と丸々としてきたもんね…。



「教団に人、残ってたかな…」

「捜せば一人くらい見つかるだろう。心配するな」



不安が顔に出る私とは裏腹に、いつもの飄々とした態度を全く崩すことなく元帥は適当に空っぽの棚の前に腰を下ろ───



「…汚いな」



そうとして、止まった。

元帥の極度の綺麗好きは、アレンから聞いたことがある。
初めて飲み会を共にした時も、どんちゃん騒ぎには何も言わなかったけど裸体になるタップやお酒を撒き散らすジジさんには嫌そうな目を向けてたし…。



「…その白衣も汚いな」

「はい?」



と、その目が今度はじぃっと私を見て…なんですか藪から棒に。
これでも時間を見つけて洗濯してるんですからね。
それ以上に激務で、白衣を着たまま寝落ちることも多いからすぐよれよれになるだけで…不可抗力ですそんな目で見ないで下さい。



「わ、私に罪はありませんよ。あるとするならブラック体制の職場です」

「そうだな、南に非はない。ということで貸せ」

「はい?」



まさかそんなにあっさり肯定されるなんて。
もう一度拍子抜けした声を漏らす私に、今度は片手を出して催促してくる。

それは…この白衣を脱げってこと?

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