第85章 そして ここから
「なんで…っ」
「そんなに立て付けの悪い扉だったのか」
「そんなことないです!今まで一度だってこんな不備なかったですし…っ」
「しかし現にその扉は開かなくなっているしな」
慌てる私の横から扉を覗き込む元帥が、ふぅむと顎を指先で撫でる。
「この教団も設立して長い。ガタがきていたんじゃないのか?」
「じゃあ押せばどうにか開くかも…っ」
「ならんそうだな」
上半身を扉に当てて全身で押してみるけど、びくともしない。
そんな涼しそうな顔で見てないで、クロス元帥も手伝って下さいっ
「元帥の力があれば簡単に開きますよね?」
退いて場所を譲れば、再び元帥の手が扉の取っ手を掴む。
だけどガチリと歯止めをかける音を立てるだけで、やっぱり扉はびくともしない。
「無理だな。開かん」
「…本気でやってます?」
「なんだその目は」
だって元帥ともあろう人なら、こう、力入れただけで簡単に開く気がするのに…。
本当にちゃんと力入れてるのかな。
「此処はイノセンスも保管する部屋だろう。中々に強固な扉を作ったな」
そんな私の真意を読むかのように、黒い布手袋をした手の甲がコツコツと分厚い扉の側面を叩く。
確かに、簡単に奪われないように強固にはできているけど…そういえばゾンビ化したあの神田の奇襲にもびくともしていなかったっけ。
となると、この扉の頑丈さは本当なんだろう。
閉じ込められれば、クロス元帥でも出られないとか…?
「ど、どうしよう…」
今更ながら、危機感でいっぱいになる。