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科学班の恋【D.Gray-man】

第84章 オレの好きなひと。《ラビED》



なんて言ったらいいのか。
オレが軽い気持ちで与えたものに、ずっと思いを込めてくれていた南に。
比喩的表現だけじゃなく、本当に心臓がぎゅっと握り締められたようだった。

少し苦しい。
けど、その苦しさが心地良い。
堪らなく目の前の存在を、抱き竦めたくなる衝動に駆られる。



「…南」

「何?」

「抱きしめていいさ?」

「何言ってんの、もう抱きしめてっぷッ」



皆まで聞かずに、目の前の体を腕の中にまた閉じ込める。
変な南の悲鳴一つだって、じんわりと胸を熱くして。
ようやくその形容し難い感情がなんなのか気付いた。



「っちょ、化粧崩れる…ッ」

「何言ってんさ、もう崩れてんのに」

「えっ」



オレの胸に押し付けられた顔を無理矢理上げて、慌てた南がそっぽを向く。



「そういうことは早く言ってよ!格好悪い自分…っ」

「そーさ?言う程酷くねぇさ」

「凄く笑ってるのに!?そんな笑顔で言われても説得力ないッ」



今更ながら慌てふためく姿に、思わず声に出して笑ってしまった。
だって、そんな南がすげぇ可愛くて。
髪飾りに思いを乗せてくれた南みたいに、オレも初めて知ったんだ。
今、この込み上げる感情がなんなのか。

愛おしさだ。
なりふり構わず、第一にオレへの想いを告げてくれた南へ向ける、愛しさの感情。
つい数分前までは抱けなかった想い。

それを見つけられたのは、捨てきれずにいた想いを、南が拾ってくれたから。



「ンな拗ねんなって。大丈夫だから」

「何が大丈夫だって言うの…」

「オレには、世界一綺麗に見えてるから」

「っ」



世辞なんかじゃない。
濡れて煌めく髪の一筋も、化粧が滲んで愛嬌立つ顔も、其処らの美女くらいじゃここまで惹き付けられない。
南だから綺麗なんだ。
世界が掠れて見える程に。



「だから、もっとよく見せて。この日のこと、ちゃんと記憶していたいから」



赤い顔を俯かせる南の顎に、軽く指をかける。
ゆっくりと持ち上げれば、雨で濡れた瞳が揺れる。

嗚呼、やっぱり。
文句無しに綺麗だ。

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