第84章 オレの好きなひと。《ラビED》
ドクドクと心臓が高鳴る。
握られた手が熱い。
雨音はもう聞こえない。
なのに目の前の唇を伝う雨雫の音まで拾えそうなくらい、南に神経が集中した。
「友人としてでも、職場仲間としてでも、エクソシストとしてでも、ブックマンとしてでもなく。ただラビという人が好きなの」
南は、恋人デートは終わりだって言った。
つまりは、今はいつものオレと南の関係で。
そこを壊しに来た南の行動が何を示しているのか、流石にわかる。
「まだ、返事を待っていてくれてるなら…」
真っ直ぐに見上げていた南の瞳が、初めて揺らいだ。
濡れた唇を結んで、握ったオレの手を引き寄せて。
雫の伝う睫毛を落として、きゅっと目を瞑った。
「私のものに、なって」