第84章 オレの好きなひと。《ラビED》
「でも、ね。ラビのそれは、嫌ってる思いが全てな訳じゃないと思うな」
「そうさ?」
「うん」
まだまだ私の知らないラビの顔がある。
それを全て理解はできないけれど、今のラビを知っているから言えることもある。
「好きの反対は無関心って言うでしょ。ブックマンとしての癖だとしても、それだけ他人に興味を持って接していられるんだから。嫌なところが目につくのは、それだけ好きな思いもきっとあるから」
人間は嫌いだけど、好きだとも言ってくれた。
そのラビの思いはどちらも本心なんだと思う。
決して人に諦めや絶望を感じてる訳じゃない。
他人の死に涙してしまうところも、戦争に憤りや苛立ちを感じてしまうところも、感情豊かな表情を見せてくれるラビ自身が、何よりの証だ。
「全部を好きになってなんて思わないけど、残ってる好きな思いを大切にしてくれたら、嬉しいな。そんなラビが、私は好きだから」
最後の言葉はまた小さなものになってしまったけど、今度はちゃんとラビの耳に届いたみたいだった。
丸くなった綺麗な翡翠色の目が、ぱちぱちと瞬く。
「なんか照れるな。南に"好き"って言われるとさ」
ほんの少し、照れ臭そうに。
「貴重だからしっかり記憶しとくさ~」
そんな照れを誤魔化すように、おちゃらけて笑うラビだから。
「…じゃあ、何度だって言うよ」
気付けば口走っていた。
「当たり前に感じられるようになるまで」
ラビの明るい笑顔は好きだけど、今欲しいのはそんな笑顔じゃない。
好きも嫌いも入り混じる、複雑だけどラビらしい、その心が欲しいから。
だから───今度は私が、踏み出す番。
「私は、ラビが好き」