第84章 オレの好きなひと。《ラビED》
あそこであの子達が騒がなかったら、普通にラビとキスしてた。
それこそ本物の恋人同士みたいに。
私とラビは別につき合ってないのに…あ、今は恋人同士だけど。
それならキスしても可笑しくは……あれ?
「………」
「南?どうしたんさ、急に黙り込んで」
「っなんでもない」
なんだか頭が変な方向に沸いてる。
つられて顔も沸騰しそうになって、慌ててラビから顔を背けた。
同時に悟る。
自然に交わされそうになったキスを、自然に受け入れていた自分がいたことに。
前にラビの自室で初めて唇を奪われた時、驚きはあったけど嫌悪感はなかった。
その時とは明らかに違う自分の心に気付いてしまった。
私の心は、やっぱり答えを出していたんだ。
…このひとが、好きなんだって。
「…南って雨女?」
「そうじゃないと思うけど…ラビこそ雨男なんじゃ」
「オレは立派な晴れ男さ」
ザアアアア
一通り水族館を満喫して、いざ外の様子を見に行けば、何故か来た時より激しくなっている雨音。
思わずラビと出入口で並んで肩を落とした。
今日はとことんツイてないなぁ…気温は低くないから、雨の所為でムシムシするし。
折角の化粧も崩れてしまいそう。
「どうしたもんかなぁ。購買の傘は売り切れてるし…あ、南。アレンとかに土産買ってく?」
「うーん…今回は、いいや」
前にラビと街に遊びに行った時は、折角だからとアレン達にお土産を買って帰った。
そこの配慮だろうラビの提案を、だけどやんわりと笑顔で断った。
今は、ラビとデート中だから。
他のことにあんまり目移りは、したくないかな。
改めて自分の想いを自覚すると、この何気ない時間が凄く貴重に思えて。
繋いだこの手を、まだ離したくないと思った。
教団に帰るということは、仮の恋人同士の時間も終わるということ。
…あんまり、そのことは考えたくない。