第23章 声
「声って…は?影見た時、何もなかったって言ってただろ」
「ごめんそれ嘘」
「……嘘?」
「空耳だと思ったのその時はごめんなさい」
一気に捲くし立てて言う。
ついでに頭も下げる。
うん、私が悪かったです。
そこは全面的に謝る。
「はぁああ!?」
途端に、やっと状況を理解したラビが悲鳴に近い叫び声を上げた。
ああ、やっぱり。
「なんで南はそういう…っホラーあるある言うんさ!?」
「言いたくて言ってないんですけど!?聞いたのはラビでしょ!」
「最初から言っておけばいいだろ!なんでこのタイミングなんさ!」
「あんなに怖がるラビとアレン見てたら、言い難いでしょ!」
お互いに言いたいこと吐き出して、ぜーぜーと息をつく。
「「………」」
そのまま同時に、無言でちらりと来た道を振り返る。
「…声、まだ聞こえるんさ?」
「今は大丈夫です」
「よし、走るぞ」
「了解」
同じことを考えてるだろう、ラビに一つ返事で頷く。
暗闇だとか狭い通路だとか一切考えず、がしっと無言でお互いの腕を握る。
幽霊相手に戦うも何もない。
逃げるが勝ち。
そして同時に駆け出した。
「まって」
否。
「え?」
くい、と後ろから私の服を引っ張る何かに、それは失敗した。
「そっち、危ない」
振り返れば、さっきまで誰もいなかったのに。
其処には小さなぼんやりとした輪郭が見えた。
暗くてはっきりと誰かはわからなかったけど…子供?
この声って───
「…クロル、君?」
村で遊んでいた、あの男の子だ。