第23章 声
「いいから早く進もうよ。なんでもないから」
「南が答えたら進むさ」
「いやいや。こんな気味悪い場所早く出たいから」
あんまり長居したら、お化け様が怒るでしょ!
「なんでもないって。鼠にビビっただけです」
「鼠出てねぇだろ」
「出たんです、さっき。その目が光ってたんです怖かったんです!」
「急に怖がりなの認めたなオイ」
だって怖いんです!
「いいから早く…っ」
───ねぇ、
ぞわりと、すぐ耳元で吐息を感じた。
───こえ、聞こえてる?
静かに耳元で問い掛けられる声。
それは紛れもなく"私"に向けられた声だった。
ごめん、もう色々と限界です。
「聞こえてませんん!!!」
「うわっ!?は!?なんさ急に!?」
耳を塞いでラビに突進する。
そのままの勢いで、ラビの手を咄嗟に掴んで狭い通路を走った。
「待てって、落ち着けって!闇雲に走ったら怪我するさ!」
「怪我くらい平気!それより出口!南無阿弥陀仏!!」
「なんで御経!?」
真っ暗な通路をガツガツと岩場に当たりながら走る。
けれど来た時より痛くないのは、多分ラビが羽織らせてくれた団服のお陰。
ありがとうございます!
「ちゃんと説明しろって…!」
と、ぐんと強い力で握った手が引き止めてくる。
今はそれ駄目!
立ち止まるの禁止!
「声!」
「声っ?」
「変な声がしてるの、さっきから!」
ぐいぐいとラビの手を引っ張りながら先を促す。
言いたくなかったけど、仕方ない。
此処で立往生するくらいなら腹を括ろう。
「変な声って…」
「ラビが黒い影を見つけた時も、してたの声が…っそれが今も聞こえて…っ」
「は?」
「とにかく怖いんですよ!早く此処から出ないと、絶対出るから!」
絶対、触れちゃ駄目なものに!