第84章 オレの好きなひと。《ラビED》
「でも…」
それでもまだ暗い南の表情に、こっちも暗くなる前にと思考を切り替える。
オレまで落ちちまったら、折角珍しく重なった非番が台無しになるもんな。
つーか、リーバーの言う通りに下手して南を泣かせる羽目になんてでもなったりしたら。
リーバーに合わせる顔がなくなる。
「よし!わかったさっ」
「?」
「じゃあ南が一気に名誉挽回する方法が一つあるけど、それにノる?」
「そんな方法あるの?」
ぱちんと指を鳴らして仕切り直す。
きょとんと軽く首を傾げながらも、期待に満ちた顔で南が尋ねてくる。
「あるさ、南にしかできない方法が」
「何?」
そこへにっこり笑って提案してやった。
「今日一日、オレと恋人デートすること」
「へ…?」
折角、南を独占できる貴重な時間なんさ。
振り返れば二人きりで自由に外出なんて、春先にオレが誘った南癒しプラン以来だし。
次いつそんな日がくるか…もしかしたら、もうこないかもしれない。
それなら今此処で、思いっきり堪能したっていいだろ?
「疑似だけどちゃんとした恋人デートな。今日一日、南はオレの恋人さ」
机の上に置かれていた南の手に、自分の手をそっと重ねる。
ふわりと頬を色付かせながらも、微かに震えた小さな手は、逃げ出すことをしなかった。
…そんな反応されたら、益々図に乗っちまうんだけど。
「それならオレ、満足できるんだけど」
「…本当、に?」
「今更聞かなくてもわかるだろ?」
苦笑交じりに言えば、更にほんのりと頬を染めて南は俯いた。
もじもじと迷う素振りを見せて、それからゆっくりと上がる視線が重なる。
「…わかった。いいよ」
ほんの二単語の返事だったのに、今日は妙に綺麗な南の所為か、オレの心臓も高鳴る。
なんでこんなに綺麗なんかな…南へのオレへの想い込みにしても、妙に目に止まる綺麗さだ。
見てるだけでドキドキする。
「うし。じゃあ早速行こうぜ」
こっちまで顔が色付く前にと、重ねていた手を握って席を立つ。
「何処に?」
「何処へでも!」
さぁ、メインはこっからさ。