第84章 オレの好きなひと。《ラビED》
「───南さん?わあ、その格好綺れ」
「それ以上はストップ」
「え?」
私の姿を見た途端、顔を輝かせるアレンの目の前で手を翳す。
ぐったり疲れた肩を落として、申し訳ないけど頂けそうな言葉は止めさせてもらった。
「な、なんでですか?」
「よく似合ってるわよ?南さん」
「リナリーもありがとう。でもいいの。お腹一杯」
「何があったんですか…」
待ち合わせの門前まで辿り着く途中で、ちらほらと顔を合わせた科学班の面々。
以前のように私の姿を見て、皆似合ってると言ってくれた。
馬子にも衣装だとか言われたりもしたけど。
兎に角愛ある言葉をくれた。
それは嬉しかった。
とっても嬉しかった。
でもね、その後皆が皆して、怖い顔してデートかと詰め寄ってくるもんだから。
言い逃れに必死で、結局余裕を持って出たのに道草を喰ってしまった。
なんでそんな華やかなものと疑うかな。
そんなに私がお洒落するの可笑しいですかそーですか。
いや、気持ちは、なんとなくデートに…ち、近いけど…でもこれはラビの日頃の疲れを癒やしてあげる為であって…!
って誰に言い訳してんの私。
兎にも角にも、褒め言葉はもう充分。
その後保護者面した科学班の皆の顔が浮かんでしまうから。
いい加減、私の片想いなんて妄想を勝手に暴走させるのは止めて欲しい。
…ある意味では、片想いに近いのかもしれないけれど。
「ちょっと羽根を伸ばしに出掛けるだけだし。私も女だから、多少のお洒落はするよ。それだけ。じゃあね」
「あっ」
「行っちゃった…」
「ただ出掛けるだけにしては、顔が生き生きしてるように見えたんだけどなぁ…」
「アレン君も?」
足早に二人の下を去る。
呟く声は聞こえなかった。